エレキギター用アンプとヘッドホンの接続ガイド

こんにちは。音響機器同好会、運営者の「かいちょー」です。
エレキギターとアンプ、そしてヘッドホン。この組み合わせって、自宅で練習するギタリストにとっては永遠のテーマかもしれませんね。アパートやマンションだと、アンプから音を出すのは難しいですし。
いざヘッドホンを繋ごうと思っても、「アンプなしで練習する方法は?」「どの接続方法がいいの?」「音が悪いんだけど…」「片耳からしか聞こえない!」なんて、いろんな疑問が出てくるかなと思います。ギター用ヘッドホンアンプなんて便利なものもありますし、機材の選び方も迷いますよね。
この記事では、そんなエレキギターのヘッドホン練習に関するアレコレを、基本的なところからトラブル対策まで、なるべく分かりやすくまとめてみました。ぜひ参考にしてみてください。
この記事で分かること
- エレキギターをヘッドホンで鳴らすための主な接続方法
- ギター練習に適したヘッドホンの選び方(密閉型・開放型)
- 「音が悪い」「片耳」など、よくあるトラブルの原因と解決策
- 安全に練習するために知っておきたい聴覚保護の知識
エレキギターとアンプ、ヘッドホンの基本

まずは、エレキギターをヘッドホンで鳴らすための基本的な知識や、機材の選び方について見ていきましょう。最近は機材も進化していて、いろんな選択肢がありますね。
アンプなしでも練習できる?
結論から言うと、アンプなしでも練習は可能です。
もちろん、エレキギター本体に直接ヘッドホンを挿しても音は出ません(仕組み上、音が出ても蚊の鳴くような音ですが…)。音をヘッドホンで聴けるレベルまで増幅する「アンプ」の役割は必ず必要になります。
その「アンプ」の役割を、必ずしも私たちがイメージする「四角い箱型のアンプ」が担う必要はない、ということですね。
ギター用ヘッドホンアンプ
VOXのamPlugシリーズなんかが有名ですが、ギター本体に直接差し込むタイプの、すごく小さなアンプです。これ自体にヘッドホン端子が付いているので、シールド(ケーブル)すら不要で、とても手軽に練習できます。
オーディオインターフェース
PCやスマホにギターを繋ぐための機材ですね。これを使って、PCやスマホの「アンプシミュレーター・アプリ」で音を作れば、そのままインターフェースのヘッドホン端子から高音質な音で練習できます。録音もすぐできるのが大きなメリットかなと思います。
5つの主要な接続方法
主な接続方法は、手軽さや音質によって、だいたい以下の5つに分けられるかなと思います。
- 練習用アンプのヘッドホン端子に繋ぐ 一番シンプルで、多くの人が最初に試す方法ですね。MarshallやFender、Blackstarなんかの小型アンプには、大抵「Phone」とか「Headphone」って書かれた端子が付いています。
- ギター用ヘッドホンアンプ(amPlugなど)を使う 先ほど紹介した、ギターに直接挿す小型アンプを使う方法です。手軽さと携帯性は抜群です。
- オーディオインターフェースとPC/スマホを使う アンプシミュレーター・アプリ(BIAS FXとかAmpliTubeとか)を活用する方法。音作りの幅は無限大ですが、PCやスマホの起動が必要です。
- マルチエフェクターを使う Boss GT-1やZOOM Gシリーズなど、最近のマルチエフェクターには高性能なアンプシミュレーターとヘッドホン端子が搭載されています。音作りも練習もこれ一台で完結できますね。
- 高品位なアンプシミュレーター・ペダルを使う Strymon IridiumやKemper Playerなど、プロも使うようなペダル型のアンプシミュレーターです。高価ですが、練習からライブまで同じ音を使えるのが魅力です。
手軽さ重視なら「1」か「2」。音質や拡張性(録音とか)を考えるなら「3」や「4」がおすすめです。自分の環境や予算に合わせて選ぶのが一番ですね。
ヘッドホンの選び方:密閉型と開放型
ヘッドホンなら何でも良いかというと、実はそうでもありません。特にギター練習用には「モニターヘッドホン」と呼ばれる、音がフラット(味付けが少ない)なタイプがおすすめです。
モニターヘッドホンは、構造によって大きく2種類に分けられます。
密閉型 (クローズドバック)
耳を覆う部分(ハウジング)が密閉されていて、音が外に漏れにくく、外の音も遮断しやすいタイプです。レコーディングスタジオでよく見るのはこれですね。
- メリット: 音漏れが少ない(夜間練習に最適)。遮音性が高い。
- デメリット: 音がこもりやすい。長時間だと疲れやすいかも。
開放型 (オープンエア)
ハウジングがメッシュ状などで開いていて、音が抜ける構造です。
- メリット: 音が自然で抜けが良い。付け心地が軽く、疲れにくい。
- デメリット: 音漏れが非常に大きい。遮音性が低い。
夜間の音漏れ防止はもちろんですが、もう一つ大事な理由があります。それは、「ピッキングの生音」です。
エレキギターって、アンプに繋がなくても「カチャカチャ」という弦を弾く生音がしますよね。開放型だと、この生音がヘッドホンからの音に混ざってしまい、「今聴こえてる高音が生音なのか、アンプの音なのか分からない」という状態になりがちです。これでは正確な音作りやニュアンスの確認が難しいですね。
そのため、練習の質を高める意味でも、私は「密閉型」を強く推奨します。
インピーダンスとは?選び方の注意点
ヘッドホンの仕様表を見ると、必ず「インピーダンス(Ω・オーム)」という項目があります。これは「電気抵抗値」のことなんですが、難しく考えなくて大丈夫です。
「この数値が高い(高インピーダンス)ヘッドホンは、鳴らすために大きなパワーが必要」とだけ覚えておけばOKです。
例えば、スタジオで使うような250Ωといった高インピーダンスのヘッドホンを、amPlugやスマホの端子(パワーが小さい)に繋ぐと、「音がすごく小さい」「歪んだ音になる」といった問題が起きる可能性があります。
ギター用機材やPCに繋ぐのがメインなら、32Ωから80Ωくらいまでの、比較的インピーダンスが低い(鳴らしやすい)モニターヘッドホン(Sony MDR-7506とかCD900ST、audio-technica Mシリーズなど)を選んでおけば、まず失敗はないかなと思います。
変換プラグが必要なケース
ヘッドホンのプラグ(先端の金属部分)には、主に2つのサイズがあります。
- 3.5mm ステレオミニプラグ スマホやPC、amPlugなどで使われる小さい方です。
- 6.3mm ステレオ標準プラグ ギターアンプやオーディオインターフェースで使われる大きい方です。
最近のヘッドホンは3.5mmプラグで、6.3mmに変換するネジ込み式のアダプタ(変換プラグ)が付属していることが多いですね。もし付属していなくても、数百円で買えます。
「アンプの端子が大きくて挿さらない!」という時は、この変換プラグが必要になります。
エレキギターのアンプとヘッドホンの問題解決

さて、ここからは接続した時に起こりがちな「あれ?」というトラブルの解決策を見ていきましょう。原因が分かれば、意外とあっさり解決することが多いですよ。
音が悪い「ジャリジャリ」の正体
「アンプのスピーカーから出す音は最高なのに、ヘッドホンで聴くと音が薄っぺらくてジャリジャリする…」これは本当によくある悩みです。
この「ジャリジャリ」の正体は、音作りの「途中の音」を聴いてしまっていることが原因です。
私たちが普段「良い音」と感じているエレキギターの音は、「アンプヘッド(音を作る部分)」と「スピーカーキャビネット(音を出すスピーカー部分)」の2つが揃って完成しています。特に「スピーカーキャビネット」は、単に音を大きくするだけでなく、耳障りな高域(ジャリジャリ成分)をカットして、音に太さや空気感を加えてくれる「フィルター」の役割を担っています。
つまり、音が悪いヘッドホン端子というのは、この「スピーカーキャビネット」を通る前の、未加工の音(ジャリジャリした音)を出力してしまっているんですね。
音質改善とキャビネットシミュレーター
この「ジャリジャリ問題」を解決してくれるのが、「キャビネットシミュレーター (Cab Sim)」です。
これは、その名の通り「スピーカーキャビネット」の音響特性を仮想的に再現してくれる機能や機材のことです。未加工の音を入力しても、これを通すことでキャビネットからマイクで録ったような、聴きやすい音に変換してくれます。
最近では、さらに高精度な「IR (インパルス・レスポンス)」という技術も主流ですね。これは、特定のマイクで特定のキャビネットを録音した際の「響きそのもの」をデータ化したもので、非常にリアルなサウンドが得られます。
先に紹介した「方法3:AIF+アプリ」「方法4:マルチエフェクター」「方法5:シミュレーター・ペダル」は、ほぼ全てこの高性能なCab SimやIRを内蔵しています。だからアンプ直挿しより高音質な練習が期待できる、というわけですね。
片耳からしか聞こえない原因と対策
これもよくあるトラブルですが、故障を疑う前にプラグの規格を確認してみてください。
原因のほとんどは、「モノラル端子」に「ステレオヘッドホン」を挿していることです。
ヘッドホンのプラグ(TRSプラグ)は、先端から「左耳(T)」「右耳(R)」「共通(S)」の3つの電極に分かれています。対して、ギターシールドなどに使われるモノラルプラグ(TSプラグ)は「信号(T)」「共通(S)」の2極しかありません。
古いエフェクターの出力端子など、モノラル(TS)設計のジャックにステレオ(TRS)プラグを挿すと、ジャック側には「右耳(R)」に信号を送る仕組みがありません。結果として「左耳(T)」にだけ信号が流れ、「片耳からしか聞こえない」状態になります。
アンプやAIFの「ヘッドホン専用端子」を使っていればまず起こりませんが、もしミキサーや古い機材でこの症状が出たら、モノラル信号を左右に分岐させる専用の変換アダプタを使う必要がありますね。
アンプにヘッドホン端子がない場合
ヴィンテージアンプや大型のアンプヘッドには、ヘッドホン端子がないモデルも多いです。
この場合、「アンプなし練習(AIFなど)」に切り替えるのが手っ取り早いですが、どうしてもそのアンプの音で練習したい場合は、アンプの背面にある「LINE OUT (ラインアウト)」や「EFFECT SEND (エフェクトセンド)」端子を使います。
ここからオーディオインターフェースの入力に接続し、AIF側のヘッドホン端子から聴く、という流れですね。ただし、この方法だと先ほどの「ジャリジャリ問題(Cab Simがない)」が発生する可能性が非常に高いので、AIF側(PCアプリなど)で別途Cab Simをかける必要があります。
【警告】絶対に「SPEAKER OUT」には接続しないでください!
アンプの背面には、見た目が似ていても絶対に接続してはいけない端子があります。それが「SPEAKER OUTPUT」や「SPEAKER OUT」と書かれた端子です。
これは、スピーカーキャビネットを振動させるための、非常に強力な電力(電流)が流れる端子です。もしここにヘッドホンやオーディオインターフェースを接続すると、機材が許容量を遥かに超える電力で一瞬で焼損・物理的に破壊されます。
これは「音が悪い」どころの話ではなく、機材の故障や火災の原因にもなり得る重大な事故です。「LINE OUT」と「SPEAKER OUT」の誤接続は、絶対に行わないでください。
聴覚保護と安全な音量の基準
ヘッドホン練習は近所迷惑にはなりませんが、その代わり、すべての音圧を自分の耳が引き受けることになります。これは、私たちが思っている以上に耳に大きな負担をかけます。
「ヘッドホン難聴(騒音性難聴)」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。これは、大きな音を長時間聴き続けることで、内耳にある音を感じ取る「有毛細胞」という細胞が壊れてしまうものです。
一番恐ろしいのは、一度壊れた有毛細胞は二度と再生しないということです。つまり、治療法がなく、失った聴力は戻りません。唯一の対策は「予防」だけです。
WHO(世界保健機関)などは、安全な音量の目安を示しています。例えば「80dB(電車内くらいの音)を週40時間まで」といった基準がありますが、これはあくまで目安です。
特に歪んだギターサウンドは、音の強弱がなく常に最大音量に近い状態が続くため、耳を非常に疲れさせます。
一番確実で、今すぐできる予防策は「定期的な休憩」です。
音量に関わらず、長時間の連続使用は耳に負担をかけます。目安として、「1時間練習したら、10分間」はヘッドホンを外して耳を休ませる時間を設けることを強くおすすめします。耳もクールダウンが必要なんですね。
大切な聴覚を守るため、音量は「クリアに聞こえる範囲で最小限」を心がけ、無理をしないでくださいね。最終的な判断は、ご自身の体調や、必要に応じて耳鼻咽喉科などの専門家にご相談ください。
良いエレキギター、アンプ、ヘッドホン環境
エレキギターとアンプ、ヘッドホンの関係、奥が深いですよね。
単に接続するだけでなく、「Cab Sim」の重要性を理解して音質を追求したり、機材の規格(インピーダンスやプラグ)を知ってトラブルを回避したりすることが、快適な練習環境に繋がるかなと思います。
そして何より、素晴らしい音楽を長く楽しむために、耳の安全(聴覚保護)には最大限の注意を払ってください。この記事が、あなたにとって最適な練習環境を見つけるヒントになれば嬉しいです。

